CLMV 諸国に対する提唱

「ベトナムの伝統工芸村における観光のあり方」 で述べたように、調査団は工芸品産業と観光振興の「持続可能な開発」を展望に入れながら調査を行い、それに基づいて提案を行いました。

人材開発は持続可能な開発を行う上で、欠くことのできないものです。農村の人々を対象に工芸品産業と観光振興を行うとはどういうことかという意識喚起のためのワークショップを開いたり、技術力を高めたり、観光客のニーズにあった商品を作るための指導を行うことが大切です。今回のワークショップで明らかになったように、村人にとって「自分たちの文化や生活を再認識し、材料になる竹や籐を家の周りに植え、それらを無駄なく使用する」というような考え方は非常に新しいもので、この開発を成功させるには、まず彼らの考え方のパラダイムを変換する必要があります。このような教育活動を行わずに、技術のみのセミナーやインフラの整備のみを行っても、持続可能な開発をすることは難しいでしょう。これらの考えを踏まえ、以下、CLMV諸国に対する、全体的な提案を行いました。


@村の人々の意識を向上させるために、ワークショップやセミナーを開く


Aトレーニング


B商品開発と品質管理

Cフィールド・スタディ


D他の機関との連携の強化


Eツアーの内容に関する、詳細なアドバイス


F「交流型・滞留型旅行」の提案

旅行業者から提案されたように、実際にマスタープランを作るのは、非常に大事なことです。旅行業者を対象に行ったアンケート結果からも分かるように、旅行業者は日帰りツアーのような手軽なツアーに注目しており、雰囲気が良く、質のいい工芸品を買うことができる村へ、ほかのツアーと組み合わせて行くことを考えています。まず手始めに、この地域でツアーを開始するときは、この提案にのっとった、手軽な日帰りツアーを興し、旅行業者や観光客にこれらの村の魅力を知ってもらうようにするのが現実的だと思われます。村自身も、これらのツアーで観光客を受け入れることで、いくらかの資本を得ることができるでしょう。

しかし、もしこのような、利益優先の開発に力点が置かれすぎてしまうと、観光の大事な要素のひとつでもあった、静かな村の雰囲気、文化的価値観、伝統的な技術、商品の質、原料、技術の高い職人などを失ってしまう懸念があります。事実、調査団は、第一回目の調査で、すでに観光開発への取り組みに成果をあげている村が、こうした問題に直面しているのを目にしてきました。 1.3節で提唱したように、開発の過程において、伝統的価値観や文化を保持すること、またワークショップで指摘されたように、人材開発に力を入れようとする視点は、持続可能な開発を行ううえで、非常に重要なのです。

それゆえ、調査団は、一過性の観光客を大量に受け入れていくことを目指すのではなく、訪問者が腰を落ち着けて、地域の人びととじっくりと付き合うことのできる交流型・滞留型の旅行を将来の展望にすえることを提案します。それは、各地域において、どのような生活の知恵が集積されてきたかを確認する作業でもあります。朝、一日の始まりとともに、自然の神に感謝を捧げます。また、伝統的な方法で漁が行われ(竹・籐製のしかけ、びくなどを活用して)、その地域ならではの伝統的な食の文化を体験。夜は、虫の音を聞きながら、ものづくりの体験。生活の協働者として、この地域に滞在するのです。このような形の観光は、開発の最初の段階から取り入れていくのは難しいものですが、この地域の開発に携わるときには、決して失ってはならない視点だと思われます。