9つの村についての詳しい分析結果
Phu Vinh 村 (竹と籐)
強み:
- 300年に渡る歴史と伝統。
- 11世代に渡り技を伝えてきた熟練した職人が8名いる。
- 落ち着いた村の雰囲気、伝統的な趣のある建造物。職人の家は、石壁で作られ、庭が整えられている。
- Ha Noiから近い(30分程度)。
- Ha Noiまでの道が良い。村の近くにレストランもある。
- 地域のコミュニティーがよく組織されている。
- 地元の役場が地域コミュニティーと非常によく連携している。マスタープランを作っている。
- 商品の多様性がある。日用品、芸術的な作品などがある。
- 伝統的生産方法を守っている。
- 地域開発に対する強いビジョンと精神がある。
- 沢山の販路を持っている;地元の企業を通じた日本などへの輸出も行っている。
- 村の家族や近隣の村に職業機会を創出している;村の85%の世帯が生産に従事している。
弱み:
- 製品が独自性に欠ける。
- 市場の情報が不足している。
- 稲作の多忙期には労働力が足りなくなる。
機会:
- 国内市場で竹や籐の製品の需要が伸びる傾向にある。
- 外国人観光客への竹や籐の製品需要も伸びる傾向にある。
- 輸出も伸びる傾向にある。とりわけ日本向け。
- 周辺国との関連性がある:竹や籐の製品はタイ、カンボジア、ラオス、ミャンマーなどの近隣諸国でも作られている。Phu Vinh村の経験がこれらの諸国のモデルとして参考になりうる。
脅威:
- 他の省や海外の同業者との競争。
- 原材料の不足(村の中で原材料を見つけられなくなっている、外部から買い入れる原材料の価格上昇)。
- 水の汚染問題を抱えている。
Van Lam Village (刺繍)
強み:
- 300年の歴史と伝統。
- 有名な観光地に至近(陸のHa Long湾と例えられる景勝地 Tam Coc Bich Dong)。
- 村の雰囲気は良く、村の家の建造物は興味深い。
- 村の中小企業で、ベトナムの様々な地域の伝統工芸品を生活に使っている様子があり、ベトナムの伝統文化を大切にする姿勢がうかがえた (Bat Trangの陶器セット、螺鈿細工の漆塗り家具、Dong Ho版画、Ninh Van村の石細工)。
- 50名の労働者を抱える、優れたマネージメントで工程を管理する村の成功している中小企業がある。
- 高品質の製品。優れたデザインとパターン、十分な商品の多様性。
- 商品のサイズと重さ:観光客が購入後に持ち帰りやすい。スーツケースに入れやすく、割れ物でないので気軽に買うことが出来る。
- 伝統的生産方法。全て手作業で行われる作業工程。
- 販路開拓に成功している。Ho Chi Minh市にもショールームを持つ企業がある。
- 製品を紹介するホームページがある。
- 村の多くの世帯が刺繍産業に従事しており、職業機会を創出している。
- 地元コミュニティーは、将来像を明確に描いている。
弱み:
- ビジネスを拡大するための資金が不足している。
- トレーニングセンターなどを持っていない。
機会:
- Tam Coc Bich Dong を訪れる国内外からの観光客へ刺繍製品を売る機会が増加している。
- 外国人観光客向け商品の販売や、海外への輸出(とりわけドイツと日本)の機会が増加している。
- 他国との関連性がある。刺繍産業の村から他の国の工芸村が学べる点は多い。
脅威:
Bat Trang 村 (陶器)
強み:
- 長い伝統と歴史(1000年以上)。
- 何世代にも渡って技術が受け継がれた職人の存在。
- Ha Noiからの距離が近い。車で30-40分程度の距離なので、半日ツアーに組み込める。
- インフラ: 道は良好。よく管理された中央市場があり、地元の中小企業・窯元が集まって商品を販売している。
- コミュニティーは良く組織されている。3年前に組合が出来た。
- 地元政府はBat Trang村の開発プランを持っている。
- 商品の多様性は十分である。デザイン、色も多様で、様々な顧客ニーズ(世代や国籍、予算の違いに応じた商品)に応えている。日用品もあれば、室内装飾用の伝統的製品のレプリカもある。
- 支払い方法も多様。主要なクレジットカードが使える。
- Bat Trangの陶器産業は村の内外に多くの職業機会を創出している。
- 将来の開発に関するマスタープランがある。
弱み:
- 村の雰囲気はもはや伝統的とは言い難く、近代的で、沢山の店が主要道路に並んでいる。
- 製品の品質が一定でない。質の良くない製品もある。
- 伝統的生産方法:生産方法は急増する需要と競争圧力から、より近代的になってきている。こうした流れは全体の質の向上を促す一方で、歴史ある伝統的な陶芸の技術が失われつつあり、観光客にとっては魅力が減ってしまっている。
- 独自性: Bat Trangの製品共通のブランド名やトレードマークがないので、市場で他の地域の製品と異なるというアピールがしにくい(調査団が理由を尋ねたところ、卸売業者が買い上げた後で彼ら自身のトレードマークやブランド名を入れるそう)。
機会:
- Bat Trang村はNGOや国際援助機関から様々な助成を受けている。
- ベトナム国内で中流階級が育ちつつあり、国内向け市場の販売も伸びている。
- Ha Noiから近く、道も良く、歴史に根ざした評判もあり、外国人観光客が多数訪れており、販売の機会が増えている。
- 日本やヨーロッパ、アメリカの市場向け輸出が伸びている。
- 他国との関連性がある。タイやカンボジアなどの近隣諸国でも陶器は広く作られており、Bat Trangの例は他国の村にも参考になりうる。
脅威:
- 国内市場においてより安い中国製品との競争がある。
- 他の村がBat Trang陶器のデザインをコピーしている問題がある。
- 地元の土は枯渇している。
Dong Giao Village (木彫り)
強み:
- 長い歴史と伝統。
- 非常に人気のある観光地である、Ha Long湾にHa Noiから行く幹線道路沿いにある。
- 伝統的な生産方式を守っている。
- 製品の品質は高く、多様性もある。製品のデザインは顧客の国籍の違いから来るニーズの違いに対応している (欧米の顧客には馬や象が、中国系の顧客には猿や豚、鳥が人気だという)。
- 中国、台湾、日本などへの輸出ルートがある。
- 木彫り産業は村に多くの雇用を創出している。97%の世帯がこの産業に従事しているという。
- 地元コミュニティーは、コミュニティーストアやトレーニングセンターの計画などを持っている。
弱み:
- 製品が大きすぎて観光客が持ち帰りにくい。
- 村の雰囲気はあまり伝統的ではない。
- 製品にあまり独自性が感じられない。中国でよく見られるような木彫りの置物と非常に似ている。
- 製品の価格が高いのに、クレジットカードを使うことが出来ないので、商品を気に入った観光客への販売チャンスを失っている。
機会:
- 外国人観光客への販売や輸出販売が増加傾向にある。
- 他国との関連性がある。周辺国でも木彫りは盛んであり、Dong Giao村の経験から学べることは多い。
脅威:
- 原材料の枯渇:地元では木彫りの材料となる木材が枯渇しており、他の省や周辺国から持ち込む必要がある。
- 近隣諸国との競争がある。
Van Phuc 村 (絹織物)
強み:
- 1160年の歴史と伝統。
- Ha Noiから至近。車で約20分。
- 商品の多様性は十分。デザイン、色、パターンも様々。
- 村人の間での協力体制がある。世帯間で染色の工程、織る工程などを分担している。
- 支払い方法も多様。主要クレジットカードが利用できる。
- 村の絹織物産業は多数の雇用を創出している。村の内外で5500名の村人が産業に従事している。
弱み:
- 村の雰囲気はもはや伝統的ではなく、極めて近代的である。観光客の眼からすると、環境が都会的なので、Ha Noiの一部だと感じるだろう。
- 商品の独自性や伝統的な手織りの価値は失われてしまった。より近代的な生産プロセスが用いられている。
- 市場の情報が不足している。
機会:
- 国内市場、観光客向け市場、国際輸出市場のいずれも販売は伸びる傾向にある。現在、製品全体の4割を村を訪れる観光客に売っている。
- 他国との関連性がある。絹織物は近隣諸国でも広く作られている(タイ、ラオス、カンボジアなど)。Van Phuc村の経験は他国の参考になりうる。
脅威:
- 中国との競争:非常に似通った製品がより低価格で売られている。
- 化学染料の廃液が水の汚染を引き起こしている。
- 化学染料を使う村人の健康問題が心配される。
Chuyen My 村 (螺鈿細工)
強み:
- 1000年の歴史と伝統。
- 村の内外で雇用を創出している。最大3500名の村人がこの産業に従事している。
- 村の雰囲気は良く、興味深い建造物も多い。
- 地元地域にトレーニングセンターとショールームがある。
- 商品の多様性は十分である。家具、絵画、日用品などがある。
- 螺鈿細工はこの村独自のものである。
- コミュニティー開発の強いビジョンがある。
- 伝統的な生産工程を守っている。
弱み:
- クレジットカードによる支払いが出来ない。海外からの顧客が家具などの高額商品を買う際に問題がある。
- 色や柄が限られている。
- 市場の情報が不足している。
- Ha Noiからの道があまり良くない。レストランやゲストハウスなどの設備がない。
機会:
- 国内市場が伸びている。現在の国内向け販売が占める割合は全体の4割。中流階級の増加により国内市場がより拡大していくことが予想される。
- ロシア、イギリス、フランス、オランダ、スウェーデン、カンボジア、タイなど、多数の国へ輸出している。現在の販売の約6割を占めており、今後も輸出の伸びが期待される。
- ミャンマーでは漆塗りが作られているものの、あまり他国との関連性がない。
脅威:
Dong Ho 村(伝統的版画)
強み:
- 500年に渡る歴史と伝統。
- 熟練の技術と画家やその家族のストーリー性がある。現在2家族がDong Ho版画に従事して織り、非常に独自性のある歴史を持つ。この2家族は20世代に渡る版画製作を続けているという。
- 村の雰囲気は非常に穏やかで、興味深い建造物もある。
- 村の位置:Ha Noiからさほど遠くはない(1時間半程度)。村までの道は良好。
- 中央政府と省政府がDong Ho版画の保全をサポートしている。
- 製品の品質: Dong Ho版画はベトナム国内でもこのDong Ho村だけで作られており、非常に独自性が高い。
- 伝統的生産手法を保全している。古い版木を保存し、糸瓜を材料とする紙に貝殻で光沢をつけて使っている。
- 将来の方向性:伝統的な版画を紹介する本を作る計画がある。
弱み:
- 色やデザイン、パターンが限られている。伝統的なデザインで、白い紙に黒の墨というパターンが大半である。
- 製品の多様性が限られている。飾るための版画と葉書しか製品がない。
- Dong Ho 版画は国内では歴史的に「テト」と呼ばれるベトナム新年の時期に飾るものであるため、需要が高まる時期が毎年限られている。
- Dong Ho村の2世帯のみが生産に従事している。従って、産業が伸びた場合の雇用の伸びも期待できない。
- 他国との関連性: Dong Ho版画は独自性の強いものだけに、その体験を他国の工芸村の参考にするのは難しい。
機会:
- Dong Ho版画は、ヨーロッパやアジアの外国人観光客にとって魅力的であり、外国人観光客が増加するに従い販売機会が増えると予想される。
- UNESCOや日本の地方政府、NGOなどからのサポートを受けている。
脅威:
- ベトナムの若い世代の間では、近代アートのほうがより身近になっており、国内市場のDong Ho版画を守るためのプロモーションを強化しないと需要は縮小するだろう。
Chuong 村(円錐形の帽子)
強み:
- 帽子の生産の長い歴史と伝統。
- 独自性の強い職人の存在;伝統的なお祭りの、踊り手、歌い手がかぶる帽子を専門に作る80歳の職人。
- Ha Noiからの距離も近い。
- 村人の7割が仕事に従事している。
- 伝統的生産様式を守っている。
弱み:
- 製品が多様性に欠ける。
- 円錐形の帽子はベトナムのあちこちで作られているため、この村の独自性は少ない。
機会:
- お祭り用の特別な帽子は、ニッチマーケットがある。
- 観光客への販売は、観光客の増加により伸びる傾向にある。
脅威:
- 国内市場の売り上げが減少傾向にある。
- 綿の帽子など、大量製品の代替製品が増えている。
- 若い世代はこの帽子をあまり好まず、近代的なデザインの帽子を好む傾向にある。
Ninh Van 村(石細工)
強み:
- 400年の歴史と伝統。
- 有名な観光地から比較的近い(陸のHa Long湾と例えられる景勝地Tam Coc Bich Dong)。
- 景観が良い。切り立った岩山が村の周りに見える。
- 伝統的生産手法と近代的な手法をうまく組み合わせている。
- 多くの村人に雇用を提供している。1000人の村人が従事している。
- 地元コミュニティーは良く組織されている。
- 地元の役場は強いビジョンを持ち、地元住民と良く連携している。
弱み:
- 製品の大きさ:観光客が買うには大きすぎる。
- 製品が多様性に欠ける。
- 製品が非常に長持ちするので、同じ顧客が短期間でリピーターになる可能性が低い。
- クレジットカードによる支払いが出来ないので、高価な商品を外国人が買いにくい。
- 市場の情報が不足している。
機会:
- 周辺地域に豊かな天然資源がある。
- B to Bビジネスでニッチマーケットがある。(ベトナムや近隣諸国のお寺向け石像)
- ヨーロッパ、アメリカ、ラオス、カンボジアなどへの輸出ルートを持つ。
脅威:
- 岩山を切り取って環境にダメージを与えている。また、生産者が岩を削る粉塵で健康を害する危険がある(マスクなどを使用せずに石から出る粉塵の煙の中で生産している)。