活動内容

マレーシア国全人教育推進プロジェクト(MAKMur)

カテゴリ : その他

地域 : マレーシア / 東南アジア

期間 : 2021年6月 ~ 2026年1月

発注者 : 独立行政法人国際協力機構(JICA)

全人的な教育を促進するMAKMurプロジェクト

マレーシアでは以前より全人的な教育の重要性が認識されており、教育セクター計画文書Malaysia Education Blueprint 2013-2025において、すべての児童が身に付けるべき特性として知識とともに思考力、リーダーシップ、倫理と精神性等が設定されていました。また、これらを育てる教育活動として、スポーツ大会、読書会、挨拶運動、掃除、リーダーシップキャンプ等が実施されていました。しかし一部の選ばれた子どもだけが対象とされ学校全体での取り組みになっていないといった課題を抱えていました。

マレーシア教育省は、活動を効果的に根付かせるために、特別活動に代表される日本の教育実践に学ぶべき重要な点があると考えました。そこで、小学校および就学前教育を対象としたJICA技術協力事業「全人教育推進プロジェクト」が開始されることとなり、アジアシードは筑波大学と共同で受注しました。マレー語の事業名は、児童の成長を促進する実践という意味のMemperkasakan Amalan Kemenjadian Muridで、略語であるMAKMurは繁栄を意味します。まだ新型コロナパンデミックの最中の2021年にスタートしました。

多様性、汎用性、明快であること

マレーシアは多民族社会であり、各民族に合わせた学校のタイプが設置されています。また地域性も豊かです。以上の状況を考慮し、汎用性を備えた明快な教育モデルにより、それぞれの学校が文脈を踏まえて自律的に既存の活動を強化していくことをねらいました。
そこで「Learning Through Experience、Self-Motivation、Equal Opportunity」の3原則と、「目標→計画→実行→振り返り→変化→(繰り返し)」というスパイラルプロセスで構成されるモデルを開発し、このモデルに則った教育活動をMAKMur活動と呼ぶこととしました。一見同じような活動であっても、教師の指示のみに従って児童が活動をしている、あるいは一部の児童のみが取り組んでいるような活動は3原則から外れているため、MAKMur活動とは言えません。

【MAKMur導入の前後でのクラス目標】

以前のクラス目標の様子。クラス担任が作成し掲示していました。

現在の様子。児童がMAKMurの3原則とスパイラルプロセスに沿って作成しています。

教師中心から児童主体の学びへ

教師は児童の発達を踏まえて教育上の目標を立て、3原則を統合した児童主体の活動を計画し、実行し、振り返り、児童の変化を見取ります。児童は自ら目標を立て、実行、振り返りを行います。このプロセスで、教師は、校長やMAKMurを推進するミドルリーダーからのサポートを受けつつ、児童の主体的な学びをファシリテートする役割を担います。小学校においては話合い活動、就学前教育においては遊びを通じた学びを中心に据え、日々の授業も含めてできる限り多くの時間にMAKMur活動を埋め込むこととしました。
また、学校向けのガイドブックや話し合いのモデル集、州・地区教育局職員向けに各地で普及していくためガイドを教育省と共同で開発を進めました。研修や情報交換機能を備えたオンラインキャンパスも開設しました。

学校向けガイドブック
オンラインキャンパスの入り口

エビデンスに基づいた開発過程

開発過程では、パイロット校に協力頂きMAKMur活動の試行を繰り返しながら、内容や表現を洗練させていきました。さらに、アンケートとインタビューを組み合わせた混合型研究法により、児童の発達に及ぼす効果や、教師にもたらす変化を調べていきました。
MAKMur活動の導入により児童の非認知能力が向上したことが、パイロット校と統制群それぞれの前後を調べて示されました。また、能力向上の背景として、学習が教師中心から児童主導へと変化し、児童の自主性と積極性が育まれていること、教師自身がMAKMurの実践を通して自信を持ち、忍耐強く、臨機応変に指導できるようになっていることが確認されました。教師の指導法の変化と児童の能力の強化との間の相互作用が生まれています。児童がリーダー的役割を交代・分担することにより、すべての児童が自信を高めて協働的な学びを促進し、それがさらに児童主体の学習を促す好循環が形成され、これらの変化にともない、MAKMur活動が児童の家庭での学習時間をのばすこと、児童間の能力格差を減少させたことも確認しました。

【サッカーの試合でもMAKMurの成果が現れました】

課外活動をMAKMurの活動として実施することにより、振り返りと改善の習慣が身に付き、意欲、自信、批判的思考力がはぐくまれていきました。サッカーのある対外試合では、児童が自主的に自分のチームの強みと弱みの分析をして、戦略を話し合いました。

エビデンスからナショナルポリシーへ

調査結果は、MAKMur活動の効果を示すために利用されただけでなく、ガイドブックの開発に活用し、全国普及に向けたアドボカシーの内容にも根拠を与えました。例えば、児童の能力を高めるための学校運営が果たす役割を構造方程式モデリングにより導き、結果をガイドブックの改善に利用しました。また「保護者が非認知能力の育成の重要性を認識している場合、児童の能力はより伸びる」ことも判り、アドボカシーに活用しました。このように、本プロジェクトの特徴として、主要な活動がエビデンス・ベースドで組み立てられた点が挙げられます。
最終的に、教育省はプロジェクトの効果と意義を確認した上で、新しいEducation Blueprint 2026-2035に本アプローチの記載が予定されており、教育省全省での取り組みとして、児童の学びに統合することとなりました。